パラキートのパラスポーツ日記

障害者サッカー中心のブログです。アンプティ、電動車椅子、ブラインド、CP(脳性麻痺)、デフ(聴覚障害者)、ソーシャル(精神障害者サッカー)、知的障害者など。そのほかパラスポーツもご紹介!

もてなしのココロ〜2018年第19回アミザーデサッカー大会②


大会2日目は学びの一日

一晩降り続いた雨は朝方には傘が要らない程度の小雨に。
パラキートは初めての富山に慣れず、トラムの乗り継ぎを失敗。富山の街を走り抜けながら会場へ。到着した頃には、2日目の日程がスタートしていました。

2日目は試合ではなく座学と実技。午前中は五福公園陸上競技場の会議室を使っての授業です。

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講師を招いて「緊張を取り除き、怪我を防止するために必要なストレッチ」を学びます。脳性麻痺の参加者にとって、ストレッチは日常生活を送る上でも欠かせないもの。

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皆、講師の指導に真剣な眼差しを向けています。

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そしていざ実践。
部屋のあちこちから「つぁっ!!」「きっつぅ!!!!」という悲鳴にも似た叫び声が上がります。みんな意外と体が硬い…。

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湿度の高い室内は、まるで蒸し風呂のよう。ストレッチで汗のにじむ参加者は、みんなで協力し合って水分の入ったコップを配布。

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コップの中身はスポーツドリンクと、鮮やかな赤の「シソジュース」。爽やかな酸味と甘みがたまらない一杯が、喉を潤してくれます。

みんなでディスカッション

ストレッチ講座の次は座学。今回のテーマは「アミザーデ20周年記念大会に向けて」。岩崎さんの呼びかけの元、翌年に迎える節目の20周年記念大会について、参加者が5つほどのグループに分かれ、ディスカッションを行います。 

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パラキートのように初参加の人間にも、大会の歴史やエピソードを皆さんが丁寧に教えてくれるので、まるで昔から参加していたかのように、会話に加わることができました。

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自然と湧き出るアイデアの山。これまで大会に関わってきた皆さんの、大会への想いが強く伝わってきます。

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プレゼンでは 「Jリーガーを招いてのドリームマッチ」や「スタッフ&ボランティアの皆さんを参加者側がおもてなし」など、愛にあふれた提案ばかり。

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そして、20回大会に向けてのサプライズの検討も、こっそりと進行していきました。その中身は、翌年の20回大会で判明することになります。

 
手作りのやさしい味

おやつタイムには手作りスイーツがぎっしり!疲れた頭にちょうど良い甘さです。

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熱中症対策にビタミンCの豊富なみかん、カリウム豊富な和ナシ。そしてスポンジケーキと生クリーム(生クリームNGの方用に、載せていないものもちゃんと準備)。

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「まだあるから、どんどん食べてね」ボランティアさんがおやつを補充。一人で2つお代わりする人も。

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アミザーデの名物、手作りの「おやつタイム」。コレで心を掴まれたアミザーデファンも多そうです。

 

午前の部が終わって、お昼ご飯は「アミザーデ+おむすび」で「あみむすび」。とてもかわいいネーミングですよね。

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実はこのおむすび、業者が用意したものではなく、ボランティアの皆さんが早朝4時に起きて、ひたすら握ってくださった愛情の詰まったもの。その姿を想像して、胸が熱くなります。

 

高校サッカーの名門校の扉を叩く

ようやく晴れ間が見えてきた午後1時。一行は競技場を離れ、バスで富山市内を移動します。
向かう先に見えてきたのは学校の校舎と、鮮やかな人工芝で覆われたサッカーグラウンド。サッカー名門校「富山第一高等学校」の練習場です。

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富山第一高等学校は、全国高校サッカー選手権の常連。2014年には隣県の強豪、星稜高等学校(石川県)に勝利して初優勝したほか、2019年高校総体(インターハイ)で準優勝という輝かしい成績を残しています。
サッカー元日本代表選手の柳沢敦さんを始め、多くのJリーグ経験者を輩出し、日本のサッカー界の未来を担う存在でもあります。

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その名門校の立派なグラウンドをお借りしての実技練習。なんとアシスタント&指導は現役サッカー部員の皆さんです。2014年に同校を富山県初の優勝に導いた名将、大塚一郎監督も参加者を出迎えます。

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大塚監督は過去にアミザーデサッカー大会に参加して得た経験を、サッカー部員にも還元するため、学校ぐるみで大会に関わっています。アミザーデ側も彼らにミサンガを送るなど、相互の絆を深めてきました。

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「障がい者にサッカーを楽しんでもらうだけでなく、その交流を通して“サッカーができる喜び”を我々が改めて教えてもらっている」「お手伝いをするのではなく、一緒に楽しむんです」と話す大塚監督。それは練習参加する部員の姿を見れば明らかでした。

 

笑いに溢れた実践練習

参加者は4つのグループに分かれ、
・シュート
・オフェンス&ディフェンス
・パス
・鳥かご

などを実践形式で学びます。

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青とピンクは女子サッカー部員。そして緑のユニフォームは男子サッカー部員です。まずはフリーキックのデモンストレーション。鮮やかに決める部員たち、さすがです。

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部員を壁にしてのフリーキック練習。なかなか決まらないシュートに、壁もたまに動いたり避けたりして、ナイスシュートをお膳立て。

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こちらでは部員が相手役になり、2vs2、3vs3で守備と攻撃の練習。

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大塚監督も笑顔で指導。「もっといけるよ!取れるよそこそこ!」

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しかし高校選手権優勝校の実績はもちろん伊達ではありません。時折見せる技術の高さに、参加者一同驚嘆の声をあげる場面も。

 

 

途中にコーチの技術指導も入れながら、実戦に役立つ技術や考え方を身につけていきます。2週間後に日本選手権を控えた横浜BAY FCメンバーにも大きな収穫があったよう。

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こちらのグループではサッカー部員同士もグループに参加して競合い。「ボール獲られたら罰ゲームで腕立て10回ね〜」負けて腕立て伏せをする部員たち。

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今日は大橋選手も参戦。レジェンドのプレーにも力が入ります。

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 元気な子供達に、大人も遊んでもらっています。子供の体力は無限!

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そんな彼らの栄養補給にボランティアの皆さんが用意してくれたのは、たっぷりの果物とこしあんが入ったフルーツポンチ。それを部員たちがトレーに乗せて配っていきます。

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疲れた参加者たちは、糖分補給すると元気良くまたグラウンドに戻っていきました。


再び降り始めた雨も意に介さず、ゴール前ではシュート練習が始まりました。

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GK役を務める男子部員たち。強烈なシュートも横っ飛び一閃、彼らにとっても良い練習になっているようです。

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横浜BAY FCの守護神、“カドッチ”こと門脇選手とのシュート対決も実現!

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それまで見ているだけだったテラさんも、堪えられずシュート練習に参加。
二人に抱きかかえられながらシュート!そして止められない部員!周囲は和やかな笑いに包まれました。

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カメラを構えるパラキートを見つけ、ノリノリの部員たち。みんな、最高!

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「その技どうやるんですか?」「上手ですね」女子サッカー部員と参加者もコミュニケーション。お互いのことを知る機会がそこらかしこに生まれています。

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「じゃあ、一発芸やります!」休憩時間にみんなを和ませるサッカー部員たち。彼らもまた、この時間を全力で楽しんでいました。

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やがて雨は再び土砂降りに。楽しかった時間も終わりが近づきます。
午後4時。幸子さんの掛け声で実践練習は終了。荒天になり、参加者を急いでテントの下へと誘導します。

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「今日は皆様のおかげで、とても良い時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。来週からスタートする全国高校サッカー選手権・富山予選大会も、良い気持ちで臨むことができます」
と、雨に打たれながら謝意を示す大塚監督。
そう、彼らはこの翌週「全国高校サッカー選手権大会・富山県予選」という大事な大会を控えていたのです。その大事な時期に、楽しそうに参加者と触れ合っていたサッカー部員たち。そしてアミザーデの参加者に最大限のリスペクトを払う大塚監督に、頭が下がる想いがしました(彼らはこの後、見事に富山県予選で優勝を飾ります)。

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同じく「風邪をひかないように十分温まってください」と参加者を気遣う幸子さん。彼女もまた、参加者にテントを譲り、自身は雨の中で参加者の体調を気遣い続けていました。

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ずぶ濡れになり、冷えそうな身体を温めてくれたのは、そんな彼女たちのココロ尽くしのもてなしと気遣い。「アミザーデの魔法」の謎が、少しずつ分かり始めてきました。

実技が終わって、日が暮れて。

サッカー部員の皆さんに別れを告げて、大会2日目は終わろうとしていました。富山駅前で解散したパラキートは、夜の懇親会まで富山市内を観光散歩。

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富山名物の「富山ブラック」を賞味。醤油ベースで真っ黒スープは濃いめの味。

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富山の街の魅力に、少しずつココロひかれていく自分がいました。

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アミザーデを守り、伝えていく人たち

郊外の小さな集会場が懇親会の会場でした。再会を喜ぶ人と、新たな出逢いに沸き立つ人とで終始賑やか。

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大会実行委員の一人、横浜BAY FCのチーム代表・木村重之さん(通称シゲさん)が挨拶に立ちます。
毎年、アミザーデサッカー大会へ参加するために一年のスケジュールを調整しているというシゲさん。19年間携わり続け、大会への想いは人一倍です。

「大会もあっという間に2日目が終わり、残り1日になりました。第19回大会は明日で終わってしまいますが『終わり』ではなくて、第20回大会の『始まり』の日になります。来年の節目にふさわしい大会になるように、明日からまたみんなで頑張りましょう!」

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大会を守り、新しい参加者や若い世代へと繋いでいく。それはこの大会が、全国的にも貴重な場だと知っているからこそ。初参加のパラキートも、この大会のことをもっと知りたいという想いに駆られていました。

それはまるで「アミザーデの魔法」が、少しずつ効き始めているかのようでした。

③へ続く
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