パラキートのパラスポーツ日記

障害者サッカー中心のブログです。アンプティ、電動車椅子、ブラインド、CP(脳性麻痺)、デフ(聴覚障害者)、ソーシャル(精神障害者サッカー)、知的障害者など。そのほかパラスポーツもご紹介!

獲ったど!C級審判資格!〜電動車椅子サッカー審判講習会


実は私、電動車椅子サッカーC級審判です

ご報告がすっかり遅くなってしまったのですが、私パラキート、今年4月に電動車椅子サッカーC級審判の資格を取得しました。審判のことをより深く知り、間違いのない記事を書きたいというのが受講の動機。

実は去年の電動車椅子サッカー日本選手権で、審判について触れた記事を書いたところ、ちょっとした反響をいただきました。これが問題の記事。 

okina-para-sports.hateblo.jp

電動車椅子サッカーは健常者サッカーに比べると比較的判定しやすいものだと、この時までは考えていました。ちょっと複雑なルールもあるけれど、まあ覚えれば済む話だし。なので、微妙な判定に納得がいかない部分があり、記事内で誤審について触れました。
ところが「電動車椅子サッカーのジャッジは健常者サッカーよりも難しい」など、いろいろなご意見があり、思い込みで審判を批判するのはフェアではないと考えました。
審判講習会は基本的に年に1〜2回しか開催されません。従って、今回を逃すと次は来年。…ということで、2月の神奈川県電動車椅子サッカー協会主催「電動車椅子サッカー初級審判新規講習会」に、駆け込みで申し込んだ訳です。

電動車椅子サッカーの審判とは?

その前に、電動車椅子サッカーの審判について触れておきたいと思います。
電動車椅子サッカーの審判は5段階の資格に分かれています。最上位は国際審判。国際審判員の斎藤純一レフェリーは、7月のW杯に派遣されました。その下にA1、A2、B級、C級と続きますが、C級は副審のみ担当可能で、B級になって初めて主審として笛を吹くことができます。

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C級まではチームに所属することが許されますが、B級以上はチームから離れなければなりません。そのため、チーム練習に活かすためやルールを学ぶために、C級審判の資格を持っているチーム関係者は数多く、自チームが出場しない練習試合や大会でフラッグを振っている姿も時折見ることができます。

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出場のなかったYokohama Bay Dreamの菅野監督が副審を務めたドリームカップ

また、所属する県協会以外の県での審判活動は制限されており、県外で活動するためには許可が必要です。審判が上のランクに上がるためには、年間で定められた回数の試合プラス上記の制約をクリアする必要があり、ハードルは非常に高いです。特に今期から大会数が少なくなったため、実践の機会が減ることが懸念されています。取得しやすいC級、B級に比べ、年数のかかるA級以上が極端に少なく、経験の乏しい審判が主要大会の笛を吹くケースが増えることが予想されます。

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県外で経験を積むためには特別な許可が必要

このほか、昇級にかかる年数が合計で10年以上になるため、高位審判の高齢化も問題になり始めています。そんな状況を鑑みてか、審判経験を積みやすくするよう一部規約の改定の動きも出てきているようですし、今後に期待ですね。


いよいよ講習スタート!

初級(C級審判:副審)を取得するためには、丸一日かけての講習が必要です。この日の講師は「審判員インスペクター」と呼ばれる、審判経験の豊富な上級審判が担当。午前中は座学です。50ページにもわたる公式ルールガイドを元に、副審に必要な知識を学びます。コートの大きさから始まり、基本的なルール、旗の上げ方など基礎的な内容を学びます。

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50ページ。かなりのボリュームです。もちろん全部を読むわけではありません

基本的にはサッカーに近いルールなのですが、電動車椅子サッカーならではのルールが2つ存在します。一つは「2on1」。ボールに対して、半径3m以内に各チーム1人しかプレーに関与することが許されないというルール。もう一つは「3in(スリーパーソン)」。ペナルティエリア内にDFが3人入ってはいけないというルールです。大雑把に言ってしまえば、試合中の笛はこの2つの反則と激しいチャージのときに吹かれることが大半なのですが、とても難しい判断が要求されます。これが、誤審疑惑を引き起こす要因になるのです。

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慣れないルールなので、理解するのに非常に時間がかかりました。

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頭を使いすぎたので、糖分補給に横浜ラポールの食堂にある親子丼。超うまい!

2時間の座学を終え、午後はいよいよ実技講習。Yokohama CrackersとYokohama bay Dreamの2チームの合同練習の場を借りて行われました。この日はドリームカップを直前に控えた貴重な練習日。にも関わらず、時速6kmでの練習にご協力をいただきました(両チームの皆さん、本当にありがとうございました!)

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審判講習が横浜クラシコとは…本当に緊張しました(^^;

緊張でガチガチの我ら受講生の緊張をほぐしてくれる選手のみなさん。しかし、当の私は緊張のあまり撮影を忘れるという大失態…ということで、私の講習中の様子は残念ながらお見せすることができません…(以降の写真は諸先輩方の実際の試合風景です)。
実技講習は、まずコートの設営から始まります。ホワイトテープで実際にコートを設営するのですが、全てをメジャーで測るのではなく、歩幅で体に覚えこませます。セットプレイ時の選手同士の距離感や、2on1(後述)の範囲など、プレイ中に必要な距離感覚も同時に養うことができるのです。

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コートの設営が完了すると、いよいよ副審として実技講習開始。まずはお手本として先輩C級審判の動きを見ながら、サインのタイミングや選手との間合いの取り方などを勉強します。これを覚えておかないと、キックインのときに鋼鉄のバンパーが接触して、大怪我を負うからです(実際に骨折した審判もいます)。

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早くリスタートしたい選手に対して、副審は息を合わせなければいけません

私も先輩副審と息を合わせてフラッグを振りましたが、これが全くうまくいかない…キックインするチームと反対の方角へフラッグを振ったり、フラッグを掲げずに手を掲げてしまったり。

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旗を振る手に迷いなし。審判に迷いは禁物です

セットプレイ時のボールのセットも大事な役割の一つ。少しでも転がってしまうとコントロールを乱してしまうので、素早く、完璧に静止させなければなりません。でもこれが難しい…。

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素早く、しかも正確にボールをセットする副審。動作にも無駄がありません

審判のもう一つの役割、それは試合中の選手の安全に気を配ること。ボールが高く跳ね、選手の頭を直撃するようなこともよくあるこの競技。選手の安全を守ることは審判にとって大切な任務です。
本来審判は選手と交流することを制限されますが、この競技においては、普段の会話やイベントでの交流などで互いにコミュニケーションを取り、選手の健康面を共有することも必要なことなのかもしれません。

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ボールが直撃した選手の安全を確認する主審

試合展開は目まぐるしく変化します。常に切らすことのない集中力も必要。私も一試合を終えただけで、大汗をかき、体はこわばり、どっと疲れが出ました。これが主審だったら、この疲れはさらに倍増でしょうね。しかもこの時は時速6kmですから、今後時速10kmの審判を務める時はもっと大変なはずです。

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緊張感漂うピッチ上で、毅然とジャッジを続ける審判団たちには頭が下がります。

なんとか事故もなく無事講義が終わり、最後に審判記録報告書などを頂いてこの日は終了。

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修了証を授与。1日お疲れ様でした。

後日、私の手元にも審判のワッペンが届きました。緑色のラインに「REFEREE」の文字。手に取るととても誇らしい気持ちになりました。

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鮮やかな緑のライン。ひよっこ審判誕生です

自分の下したジャッジが、選手の人生を変えてしまうかもしれない。そんな重圧を背負いながら、審判も戦っています。取材を進めていくうちに、強い思いを持った審判の方々のお話を伺うこともできました。いつか、そんな彼らの取材もしてみたいと思っています。

皆さんも観戦の時は、そんな審判団の働きも是非観てください。観客の目が審判の質を向上させ、競技全体の質を高めることにも繋がるのですから。

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ということで、選手、スタッフの皆さん。私が大きな大会の場で副審を務める機会があるかはわかりませんが、その時はお手柔らかによろしくお願いしますね。
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追記:C級審判の活動範囲
JPFA審判委員会発行の「一般社団法人日本電動車椅子サッカー協会登録審判員の登録カテゴリーについて(2012年3月18日制定:2017年4月1日改定)」から抜粋すると,C登録は下記が担当できます。
担当できる試合:「JPFA大会地域予選(6km/h以下),地域を超えた交流試合(6km/h以下),地域主催大会(6km/h以下)」
役割:「主審※2,副審,第4審」

※2 JPFA C登録審判員として1年以上の活動実績を持つ者で、地域(都道府県及び地域大会)において、JPFA審判インスペクターまたは地域(都道府県)インストラクターの指導のもと担当することができる。
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(了)

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