フロンタウンさぎぬまが真っ青に染まった!
汗ばむほどの春の陽気に恵まれた3月31日。
神奈川県川崎市にあるフロンタウンさぎぬまにて開催された「まぜこぜスマイルサッカー」なるイベントを取材してきました。
国連が4月2日に定める「世界自閉症啓発デー」に合わせて、日本各地で展開された「Warm Blue 2018」キャンペーン。その一環として一般社団法人日本障がい者サッカー連盟(JIFF)が開催した、7つの障がい者サッカーと健常者との「まぜこぜ」サッカー大会です。
JIFFは2年前から「Warm Blue」キャンペーンに参加しており、今年で3回目。会場で7つの障がい者サッカーの体験会やデモンストレーションをしていた昨年とは異なり、今回は大会形式でのイベントになりました。
会場には青いものを身につけた大勢の参加者が集まり、コートは一面真っ青。雲ひとつない快晴がさらにその碧さを際立たせていました。
ちなみに昨年はパラキートも取材に行ってきましたよ。去年の様子はこちら。
100人近い参加者は、障害特性に関係なくチーム分けされ、総当たりで勝敗を競います。電動車椅子サッカーもアンプティサッカーもデフ(聴覚障害者)サッカーも、全部混ざり合う混成チーム。
解き放たれたサッカーの魔法「ウォーキングフットボール」
サッカーには魔法の力があります。初めて会う相手でも、ボールを一回蹴ればたちまち「仲間」になり、ハイタッチやハグまでできてしまう、そんな魔法。ボールが一個あれば「ゴール」「勝利」という共通の目的が芽生え、それに向かってみんなの気持ちが一つになれる魔法。
この日はさらに「望むなら、誰でも主役になれる」魔法がかかっていました。それが「ウォーキングフットボール」です。
「ウォーキングフットボール」とは、文字通り「歩くサッカー」です。ウォーキングフットボールの発祥は、サッカーの発祥地・イングランド。高齢の方や人工関節の方でも参加できるサッカーとして誕生しました。イングランドでは900を超える数のチームがあり、エンジョイ、競技志向と幅広く親しまれているのだそう。
魔法使いはこの二人。 JIFF専務理事の松田薫二氏と、日本ウォーキングサッカー協会(JWFA)代表理事の佐藤光則氏。
お二人は国内でのウォーキングフットボールの普及活動を通して、日本サッカー協会(JFA)が提唱する『“誰もが・いつでも・どこでも”サッカーを身近に、心から楽しめる環境を提供する(JFAグラスルーツ宣言)』活動を行っています。
JFAグラスルーツ宣言|サッカーファミリー|JFA|日本サッカー協会
定期的にウォーキングフットボール体験会や大会を開催しているので、気になる方はチェックしてみてくださいねー!
ウォーキングフットボールのルール
サッカーとは異なり、ウォーキングフットボールには独自のルールが設定されています。
・走るのは禁止(早歩きは可)
・接触禁止(スライディングも不可)
・ヘディング禁止
・オフサイドは無し
・キックインでリスタート
・GKはアンダースローしか使えない
・ボールを1.8m以上、またはゴールポストより高く蹴り上げた場合は反則
・ペナルティエリアにはGKしか入れない。GKはペナルティエリアから出られない
。
・守備側がペナルティエリアに入ってプレーに干渉した場合はPK
・反則によるPK以外は全て間接FK
・リスタート時、相手プレイヤーは3m以上離れる
「まぜこぜスマイルサッカー」では、さらに6つのルールがプラスされました。
・ブラインドサッカー用の音が鳴るボールを使う
・シュート以外は浮き球は禁止
・相手がボールを保持している場合、取りに行ってはいけない。
・一人が7秒以上ボールを保持してはいけない
・電動車椅子プレイヤーは回転してボールを蹴ってはいけない
・ブラインドサッカーの選手がボールを保持している間は、相手チームは「ボイ」しか言葉を発することはできない
これらのルールによって、サッカーの経験のない人も障がいを持った人も、誰もが一緒にサッカーができるフィールドが、そこに生まれました。
7団体の日本代表選手も大勢参加!
一般参加者に加え、この日は豪華な顔ぶれが出揃いました。障がい者サッカー7団体それぞれの日本代表選手たちや、現役の選手たちです。そしてパラキートも、取材を通して知り合った障がい者サッカーの友人、知人と会場でお会いすることができました。
2017年7月に開催された電動車椅子サッカーW杯にも出場した、電動車椅子サッカーの大ベテラン、電動車椅子サッカー日本代表・北沢洋平選手(レインボーソルジャー)。
栄光の10番を背負い、ブラインドサッカー界を牽引し続けるレジェンド、元ブラインドサッカー日本代表・落合啓士選手(buen cambio yokohama)。
その落合選手とともにブラインドサッカー界を支えるブラインドサッカー日本代表・加藤健人選手(埼玉T.wings)。
長年日本代表として活動し、パラリンピックにも出場しているCP(脳性麻痺)サッカー元日本代表・加賀山直義ヘンリー選手(Esperanza)。
2014年アンプティサッカーW杯出場経験を持つアンプティサッカー元日本代表・細谷通選手(FC アウボラーダ)。
ソーシャルフットボール(精神障がい者フットサル)国際大会2大会連続出場、愛媛の障害者国体でFC PORTとも対戦した、ソーシャルフットボール日本代表・竹田智哉選手(Espacio)。
障がい者スポーツに強く関心を持ち、障がい者の社会環境を改善するために活動を続ける薬師寺みちよ参議院議員。
世界を知る日本代表選手と対戦したり、仲間として一緒に戦ったりすることができるのも、このイベントの醍醐味です。彼らはとてもフレンドリーで、アスリートとファンの間の距離を感じさせません。
会場が神奈川県ということもあって、県内で活動する選手や関係者も多く集まりました。電動車椅子サッカーYokohama Crackersの選手たちも多数参加。
FC PORTからも選手・スタッフがたくさん参加、大会を盛り上げました。
アンプティサッカーからはFCアウボラーダの未来のエース・石井賢選手、日本選手権で大ブレイクしたFCアウボラーダ・秋葉海人選手。
聴覚障がい者の選手や指導者の方達も大勢参加されていました。手話で怒ったり喜んだり。
会場には手話通訳士の方も常駐。聴覚障がい者のコミュニケーション対策も万全で、参加者も安心して競技に参加することができます。
ほかにも、脳性麻痺の方やダウン症、自閉症の方など、様々な障がいを持った参加者が、周囲の方々と協力し合いながら、思い思いに歩くサッカーを楽しんでいました。
笑顔あふれるピッチ。楽しむことに、理屈なんて必要ない
普段はあまり他人との交流が得意でなかったり、感情を表情に表すことの少ない参加者が、屈託無く笑顔走り回る姿に少し驚いたり、嬉しかったりしながら、パラキートも写真を撮り続けていました。
そして異なる障がいカテゴリ同士でも、人は創意工夫で障壁を乗り越え、コミュニケーションをとることができるということを、改めて感じました。
会場の片隅にあった落書きコーナーには、こんな言葉が。「サッカー大好き、たのしーいよ」。理屈は抜きにして、楽しいこと、大好きなことをみんなで一緒にできればそれでいい。
会場にはいつまでも笑い声がこだまし、笑顔があふれていました。
イベント終了後、松田氏は語りました。「来場者される障がいを持つ方への配慮が足りなかったり、参加者の中にはあまりボールが触れない方がいたり、自分たちもまだまだ勉強が足りない部分があります。回数を重ねることで学び、次へと活かしていきたい」。
ボールが一つあれば、どんな人とでも繋がることができることを、この日会場にいたすべての人が体感しました。「サッカーをしたいけど障がいがあるから難しい」「他人とコミュニケーションをとるのが怖くて、サッカーができない」。
身の回りでそんな人がいたら「一緒にボールを蹴ってみよう」と誘ってください。その瞬間から魔法は発動します。障がいの有無や人種、性別、年齢に関係なく、気持ちを繋げ合うことができるはずです。
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JIFFからの当日のレポートはこちら!
(了)
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