パラキートのパラスポーツ日記

障害者サッカー中心のブログです。アンプティ、電動車椅子、ブラインド、CP(脳性麻痺)、デフ(聴覚障害者)、ソーシャル(精神障害者サッカー)、知的障害者など。そのほかパラスポーツもご紹介!

第24回日本電動車椅子サッカー選手権大会②MAX10展望

 

電クル戦線異常アリ?不穏な空気漂うMAX10

実力伯仲のPOWERFUL6同様、優勝争いの行方が混沌としてるのがMAX10。
昨年の決勝戦ではRed Eagles兵庫(兵庫県)とYokohama Crackers(神奈川県)が激突。決勝にふさわしい好勝負が展開され、Yokohama Crackersが勝ち切って優勝。

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敗れたRed Eagles兵庫の内海恭平選手がYokohama Crackersの三上勇輝選手の手を取り、勝者を称えた姿は記憶に新しいところ。しかし、今大会は不穏な空気が漂っています。

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今シーズン初め、大きなニュースが飛び込んできました。優勝したYokohama Crackersのチーム分裂。もちろんあくまでポジティブな理由での再編成ですが、その行方に注目が集まりました。

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また日本代表選手の相次ぐ現役引退のニュースも、業界を驚かせました。レインボー・ソルジャーを長年牽引し、W杯も3度出場した吉沢祐輔選手の退団、そして同じく昨年7月のW杯で活躍したYokohama Crackersのベテラン竹田敦史選手の離脱。この二人の引退は強豪2チームに大きな影響をもたらしました。

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世代交代やより高みを目指したこれらの決断は決してネガティブなものではないとはいえ、変化は苦しみを伴うもの。この先の波乱を予感させるに十分なニュースでした。


不振にあえぐ赤い王者、YokohamaCrackers

昨年の日本選手権終了後に開催された第15回横浜・F・マリノスカップ。
日本選手権優勝の勢いをそのままにYokohama Crackersが優勝し、前回大会で苦杯を舐めたFCクラッシャーズ(長野県)の連覇を阻みました。この時のYokohama Crackersは自信に満ち溢れ、輝いていました。

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そして、長年チームを牽引してきた竹田選手が、シーズン終了時(3月末まで)の現役引退を発表。

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一方でYokohama CrackersとYOKOHAMA BayDream(神奈川県)の若手中心で構成された「ヨコハマU-20」が大会を盛り上げました。

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特に新規加入の佐藤虎太郎選手、竹田選手の退団によりレギュラー格になった清水猛留選手、中山環選手の成長ぶりには期待感を抱かずにはいられませんでした。

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希望に満ちた2月の祝勝会。来シーズンに向けて抱負を語るメンバーの目はしっかりと次の目標を見据えていました。しかし今思えば、この時からすでに不協和音が鳴り始めていたのかもしれません。

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年が変わって3月に開催された時速10kmの大会、第21回ドリームカップでは、前回大会同様3人での出場となったNanchester United鹿児島(鹿児島県)が怒涛の2連覇。Yokohama Crackersもその勢いを止めることはできず、準優勝に終わりました。

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4月、YokohamaCrackersが控え選手の出場機会の確保を目的に2チーム編成になることが発表され、新設されたYokohama Red Spiritsに前述の佐藤、中山両選手が移籍。少しずつYokohamaCrackersの歯車が狂い始めます。
8月の長野県大会ではエース永岡真理選手を体調不良で欠き3チーム中3位、9月の神奈川県大会では長年格下とされて来たYOKOHAMA BayDreamに0-2で敗れ、神奈川県のタイトルホルダーの座から陥落。続く10月開催の第16回横浜・F・マリノスカップでもYOKOHAMA BayDreamに再び土をつけられ、不振は決定的になりました。

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「膿は出し尽くしました」と静かに語る平野監督ですが、果たして残り2ヶ月の準備期間でどこまで元の力を取り戻せているか。連覇を目指すYokohamaCrackersの前途は、非常に険しいと言えそうです。

隙を伺う、時速10kmのライバルたち

そのYokohamaCrackersの隙を伺うライバルたちを、ブロックごとに見てみましょう。

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Aブロック:
日本代表選手が多数所属、優勝候補が集まったガチンコブロック。
MAX10の1番の山場が、なんと初日の第一試合に訪れます。レインボー・ソルジャーとNanchesterUinited鹿児島という2つの強豪チームの直接対決です。
東武範、塩入達也という二人の大黒柱がW杯から帰還したNanchesterUinited鹿児島。モチベーションの低下も心配されましたが、3月のドリームカップで優勝した姿を見る限り、その心配も無用のようです。

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レインボー・ソルジャーはベテラン吉沢祐輔選手という大きな柱が現役引退しましたが、一方で世代交代も図るなど過渡期に差し掛かっています。こちらも日本代表の北沢洋平、内橋翠の両選手の好不調がカギを握ります。

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どちらも優勝候補の実力を揃えたチームなだけに、初戦から熱い試合になることは間違いありません。そしてその勝者の次戦はYokohama Crackers戦。タフな試合が続きます。


Bブロック
優勝争いでは第二、第三集団に回ることの多かったチームが集結。
同郷の格上YokohamaCrackersに2度土をつけ、自信を身につけたYOKOHAMA BayDream(神奈川県)は同じ山のBブロック。初戦の相手、A-pfeile広島PFC(広島県)に勝利できればBブロックの勝ち抜けも見えてくるほど、チームの完成度は上がっています。

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相対するのは昨年の雪辱に燃えるA-pfeile広島PFC。昨年大会は初戦敗退したものの、内容は決して悪くありませんでした。今期のA-pfeileグループ(ブラインドサッカー、アンプティサッカー)の躍進に、PFCも続きたいところ。

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金沢ベストブラザーズ(石川県)は成績が振るわなかった昨年大会の借りを返すべく、エース城下歩選手がストライクフォース導入を決断。今期は様々な不運に見舞われ実戦の少なさは不安材料ですが、結束力ではダントツの金沢ベストブラザーズ。すでにトップギア状態に入っています。

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Wings(岐阜県)も主要大会ではなかなか成績を残すことができていませんが、老練な松浦昌文選手が率いる青いチームは、一筋縄では攻略できないチームです。知略と知略がぶつかる名勝負の予感が漂います!

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Cブロック
こちらも粒ぞろいの優勝候補が集まり、熱戦が予想されるCブロック。
(現行ルール移行後の)日本選手権初戴冠を目指すRedEagles兵庫(兵庫県)は、FCクラッシャーズvs奈良クラブビクトリーロードの勝者と初戦で対戦。

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第16回横浜・F・マリノスカップ決勝でRedEagles兵庫と対戦したFCクラッシャーズ(長野県)は、敗れはしたものの「日本の至宝」とも呼ばれる飯島洸洋選手のキレと戦術眼は変わらず。静の飯島、動の森山、そして脇を固める選手たち。彼らのプレーは電動車椅子サッカーの醍醐味を感じさせてくれます。

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対する奈良クラブ ビクトリーロードも、2年前の栄冠を再び取り戻すべく、戦力向上を図っています。昨年の3位はPK戦によるもの。決勝へ勝ち上がる実力は今も衰え知らずです。大代裕之監督の「行ってらっしゃ〜い」の号令直下、選手たちの躍動するプレーは必見。

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試合数の多さが追い風になるか、足かせになるか。綿密な計画が必要になります。果たしてRedEagles兵庫にリベンジマッチを挑むことができるのはどちらのチームか?

Dブロック
Dブロックはフレッシュな顔ぶれが集うブロックになりました。
特に注目は、YokohamaCrackersから分化した新鋭チームYokohama Red Spirits。練習はYokohama Crakersと一緒に行なっており、若いながらも試合感は十分。レジェンド野田拓郎選手、そして内田裕貴選手ら先輩たちが若い彼らを支え、良いバランスを保つYokohama Red Spiritsを止めるのは容易ではないはずです。

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一方、時速10kmカテゴリ2年目の挑戦となるプログレス奈良(奈良県)も、大会経験値では上回っており、比較的与し易いYokohama Red Spirits戦とあって勝機は十分ありそうです。去年以上の成績を残すべく、緑のトルク軍団が立ち向かいます。

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もう一つのカードは、今期時速10kmカテゴリへと転向を表明したSafilva(北海道)とERST広島M.S.C(広島県)との対戦。
時速6kmカテゴリで躍進したSafilvaは、時速10kmへ転向して初の日本選手権。10月のマリノスカップでは胆振東部地震の影響も重なり、わずか2名で大会に臨みましたが、強豪へも果敢に挑むその姿は多くの人の心を揺さぶりました。

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一方のERST広島M.S.Cは、前回大会で小学生の2選手が大きな成長を遂げました。そこからさらに一年をかけた今、どのような試合を見せてくれるのか楽しみなところです。冷静沈着なキャプテン、中野勇輝選手の采配にも期待大。

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ベストなメンバーが揃ったSafilvaと成長著しいERST広島M.S.C。どちらが勝ってもおかしくありません。電動車椅子サッカーの将来を予感させる一戦に要注目です。


予測のできない熾烈なトーナメント戦!

昨年大会から新設された時速10kmカテゴリ。そのスピード感に慣れるため、各地域で時速10kmカテゴリが併設された大会が始まるなど、電動車椅子サッカー界に大きな影響をもたらしました。
時速10kmのスピード感やゲーム運びは時速6kmとはサッカーとフットサルほどの違いがあり、そこへいち早く慣れることが勝利への王道でした。昨年大会から1年が経ち、すっかり順応した感のある各チーム。ここからは選手個人の自己研鑽と、チームワークの良さが鍵になってきます。
そういう意味では、より質の高い展開が期待できる今大会。果たして新しい勢力が台頭するのか、それともYokohamaCrackersが連覇を果たすのか。予測ができない戦いが始まろうとしています。

時速6km、10kim共に、進化し続ける電動車椅子サッカー。その迫力は会場で直接触れてください!

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第24回日本電動車椅子サッカー選手権
第2回パワーチェアーフットボール選手権大会
日時:12/1(土)9:00〜20:00
   12/2(日)9:00〜17:00
会場:小笠山総合運動公園内「エコパアリーナ
最寄駅:JR東海道本線「愛野」駅徒歩10分
入場無料&雨天決行


(了)

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