パラキートのパラスポーツ日記

障害者サッカー中心のブログです。アンプティ、電動車椅子、ブラインド、CP(脳性麻痺)、デフ(聴覚障害者)、ソーシャル(精神障害者サッカー)、知的障害者など。そのほかパラスポーツもご紹介!

魔法は豪雨とともに〜2018年第19回アミザーデサッカー大会①


アミザーデの魔法

友人のブログを読んでいて、ふと目にとまった一つの言葉。

「アミザーデの魔法」


そのブログの主は、日本を代表するフットボール・フリースタイラー集団「球舞-Cube」に所属し、自身は障がい者施設で福祉職に就いている、フリースタイラー・浅井徹さん。パラキートもtwitterを通じて出会い、色々な場面でお世話になっています。

ブログ【介護士、球を蹴る】
http://foot-inclusion.yokohama/author/cube_toru/

球舞
https://cube-mau.jp/ 

「福祉×football」をテーマに活動を続けている浅井さん。その活動報告の中に先述の言葉と、たくさんの笑顔で溢れた集合写真がありました。
http://foot-inclusion.yokohama/%e6%9c%aa%e5%88%86%e9%a1%9e/241/

以来、その光景と「魔法」という言葉が頭から離れなかったパラキート。障がいの有無を問わず誰でも参加できるサッカー大会であることはわかったものの、「魔法」という表現を使うほどの大会ってどんな大会なのか、実はこの時、全くイメージが湧いていませんでした。
それからちょうど1年後。まごうことなき「アミザーデの魔法」を、その身で体験することに。これは、2018年9月に開催された「第19回アミザーデサッカー大会」のレポートです。

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暗雲垂れ込める大会初日

2018年9月15日朝5時。
夜行バスから降り立った夜明け前の富山の街は、なんと土砂降りの雨。

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開会式は午後1時からで時間はまだあるものの、あまりの土砂降りに頭をよぎるのは「雨天中止」の文字。片道10時間近い夜行バスの旅の果て、初めての北陸取材が「雨天中止」では笑い話にもなりません。イベントが始まるまでの間、富山の路面電車や街並みを撮影しながら待ちましたが、一抹の不安は頭を離れませんでした。

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腹ごしらえに駅ビルの「越中そば」で朝ごはん。白えびのかき揚げは残念ながら売り切れ。電光掲示板の天気予報に目をやると…会期の3日間は全て雨…!マジか…。

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午後11時。
雨はようやく小降りになり、ひとまず会場へと向かいます。富山駅から路面電車に乗ること約15分。かなた遠くに雲のたれ込める山の峰々が見える中に、あのブログで見た景色が広がっていました。
五福公園陸上競技場。ここが「アミザーデの魔法」の舞台です。
 

「友情」を育んできた大会

「アミザーデサッカー大会」は、障がいの有無を問わず、老若男女、経験者も未経験者も誰もが参加できるサッカー大会として、毎年多くの参加者が集います。浅井さんのブログに書かれていた「アミザーデ」は、ポルトガル語で「友情」の意味。
脳性麻痺(CP)選手の掛け声で2000年から始まったこの大会は、CPサッカー日本選手権の前身でもあります。日本選手権が別の大会として分離した後も、四半世紀近くに渡り大勢の方が友情を育んできました。


さて、会場にはすでに多くの参加者が受付に訪れていました。その受付カウンターで慌ただしく動く一人の女性。彼女こそ「アミザーデの魔法使い」の一人、発足当時から実行委員長を務め、19年もの間、ご夫婦で大会を切り盛りしている岡島幸子さんです。

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会場の確保や宿の手配、協力企業&自治体との交渉など、全てをご夫婦で行ってきました。まさに「アミザーデサッカー大会の母」です。

参加者に配布されるオリジナルデザインのTシャツ。毎年デザインが変わります。小さく見える「第19回」を意味する「19」の数字が、ちょっと誇らしげ。

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受付をすませて会場に入ると、カターレ富山のエンブレムに飾られた電動車椅子に乗る男性が。大会創設メンバーの一人、寺崎謙三さん(通称テラさん)です。大会について、テラさんからお話を伺いました。

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アミザーデサッカー大会は、「天然芝のピッチで試合をしたい」というテラさんの一言から始まりました。新潟在住のCPサッカー初代日本代表選手・大橋佳介選手とともに、最初は新潟と富山のチームの親善試合からスタート。

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そこから徐々に地元の理解を得て、ボランティアや賛同者が徐々に集まり、発足当時から実行委員長を務める岡島幸子さん・俊樹さんご夫婦とともに、今日までの規模の大会へと成長を続けてきたのです。


傍らには大会の歴史を表すフラッグが。「13」がテラさん。

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テラさんからお話を伺う間に、グラウンドでは設営がほぼ完了し、参加者は始まりの合図を待っていました。パラキートも機材の防水準備もそこそこに、撮影に入ります。いよいよ魔法の3日間が開幕します。

第19回アミザーデサッカー大会、開幕!

午後1時。
挨拶に立つのは岩岡研典大会運営委員長。彼もまた、アミザーデサッカー大会の精神に賛同し、大会をサポートする一人です。金沢星稜大学で教鞭をとる傍ら、ゼミ生とともに大会運営に参加しています。

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開会の挨拶が終わると、入念な準備体操…?というよりも怪しげな踊り…。

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アミザーデサッカー大会は全3日間。
初日は地域や地区ごとに分かれてのゲーム会です。参加者は富山だけでなく、新潟や関東圏からも来ています。チームとして、あるいは個人参加で。親子連れの参加者もいます。

その中に、神奈川県横浜市で活動するCPサッカーチーム「横浜BAY FC」のメンバーの姿がありました。

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翌月に日本選手権を控えた彼らと、つい1週間前に「FC PORT」として練習試合したばかり。アミザーデサッカー大会を紹介してくださった浅井さんも、横浜BAYFCのサポートスタッフとして、今大会も参加していました。

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横浜BAY FCは、アミザーデサッカー大会の最初期からの参加チームです。2001年の第二回大会に助っ人(当時はチーム名:横浜ベイドリーマー)として参加。以来欠かさず参加し続け、また実行委員としてもサポートを続けています。

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初回から大会に参加している選手も多くいます。GK門脇正一選手(左)もその一人。浅井さんの甥っ子のモッチー(右)も前回に引き続き参加です。試合前からこのノリの良さ。

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そのほかには、エンジのユニフォームを身にまとった「スペシャルオリンピックス・富山チーム」。

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黄色のユニフォームの地元サッカーチーム「FCひがしジュニアユース」も参加。

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そして白いユニフォームがひときわ目立つこのチームは「PALRABOX(パラボックス)」。大橋選手が声をあげ、1996年に新潟に設立された、健常者・知的障害者・脳性麻痺者の混成チームです。

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フィールド上には、青とピンクの鮮やかなユニフォームをきた女子選手たちの姿が。サッカーで強豪校として全国的に名高い「富山第一高等学校」の女子サッカー部の皆さんです。彼女たちはボランティアとして3日間大会を支えてくれます。

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優しさと激しさが混ざり合う交流試合

ルールはソサイチルールを採用し、フィールドには7人まで出られます。フットサルコートより広い天然芝のピッチは水を含み、柔らかく選手の身体を守ります。受け身を取ることが難しい脳性麻痺者の方も、安心して倒れることができるのです。

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審判は置かず、セルフジャッジ。そしてスコアは自己申告制です。年齢や障害の有無は関係なく、誰もが真剣に、そして楽しそう。しかし手加減はしても容赦はしない。大人も子供も意地のぶつかり合いです。

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特に注目だったのは、PALRABOXと横浜BAY FCの対戦。今大会には横浜BAY FCの若い選手たちも大勢参加していましたが、その中にはCPサッカー日本代表の戸田哲也選手(左)や大野僚久選手(右)が快足を飛ばしていました。

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対するPALRABOXも大橋選手が体調を考慮して欠場だったとはいえガチモード。サッカー経験者が多数在籍し過去何度も対戦しあったライバルです。息の詰まる攻防が展開されました。

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PALRABOXに初期から在籍する井村充選手(通称ジャイアン)も圧巻のゴール。

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浅井さんも横浜BAY FCの一員として出場。1ゴールを決めて見せました。

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ニャーのポーズ(ではない)。

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「みんな本気ですから」そう言って笑う岩岡さん。気がつくと岩岡さんもプレーに混じっています。誰もがボールを蹴りたい病に罹っているかのよう。

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3時過ぎのおやつタイム。一足先に試合の終わったサッカー少年たちは糖分を摂取。

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強まる雨脚に負けず、参加者たちもヒートアップ。応援にも熱が入ります。パラキートもボールを蹴りたくなる気持ちをぐっとこらえて、撮影し続けていました。全ての試合が終わった頃には、あたりは薄暗くなり始めていました。

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雨の中でも彼らは元気。大野選手は浅井さんにフリースタイルの手ほどきを受けていました。麻痺のある足でのリフティング、さすがです。

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もっと元気だったのは子供たち。テントから降り注ぐ雨水を浴びて大はしゃぎ。

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大会初日は土砂降りのまま終了。雨脚も衰えることなく、暖かいとはいえ9月半ばの夕暮れ。テントもゴールポストも足早に撤収。表彰もそこそこに、この日は解散となりました。

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初日終わって、アミザーデの魔法を実感することができなかったパラキート。しかし大会はまだ始まったばかり。この日すでに魔法はかけられ始めていたのです。

金沢の電動車椅子サッカーファミリーとの再会

その日の晩のこと。

実は富山に来たのにはもう一つの目的がありました。
それは、石川県の「金沢ベストブラザーズ」のみなさんとお会いすること。
電動車椅子サッカー取材でお世話になっている「金沢ベストブラザーズ」。その指揮を執る城下歩選手は、元・電動車椅子サッカー日本代表監督のお父様と、同チーム所属選手のお母様、そして電動車椅子サッカー審判として活躍されている弟さんを持つ、電動車椅子サッカー一家です。

f:id:okina_monkparakeet:20200523142154j:plain※日本電動車椅子サッカー選手権大会2018


彼らの本拠地・石川県金沢市からアミザーデサッカー大会の会場である富山県富山市までは、車で片道2時間近く。弟さんが富山市に住んでいるということもあり、タイミングを合わせて遠方から足を運んでくださったのでした。

スタッフの北島さんも合流し、富山名産の「お造り」と濃厚なお話を酒のつまみに、電動車椅子サッカー談義に花を咲かせること4時間近く。終盤には浅井さんにも合流いただいて、宴はさらに盛り上がりました。

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彼ら曰く「圧迫面接」とも言います(笑)。

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金沢ベストブラザーズは、電動車椅子サッカーとパラキートの距離を一気に縮めてくれた恩あるチーム。この魅力溢れる北陸のチームのことは、また後日ゆっくりと。

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楽しい時間はあっという間に過ぎるもので…。
名残惜しさはありましたが、2ヶ月後の「日本電動車椅子サッカー選手権大会2018」での再会を約束して、お別れです(金沢の皆さん、ありがとうございました)。

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彼らと別れた後、良質のアルコールに程よく酔わされたパラキートは、転がり込んだ大衆浴場の狭い仮眠室で眠りに落ちたのでした。

②へ続く
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