関東一が決まる、年に一度の決戦
2月25日AM9:00、川崎市立川崎高校体育館。
前日までにあらかたのセッティングを終えていた会場にはチーム関係者や主催側スタッフが集まり、計測機材や音響設備のチェック、タイムスケジュールの確認など、入念な最終準備が行われていました。
©JSFA
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ボリュームを殺したスピーカーからはFIFAアンセムが流れ、対戦チーム関係者同士も一様ににこやかな表情で談笑しています。これから始まる激戦が想像できないほど穏やかな空間がそこにはありました。今回、パラキートは大会役員(写真の撮影及び記録)としての参加。
第2回ソーシャルフットボール全国大会関東予選。関東No.1クラブの栄光、そして全国大会への切符を奪い合う決戦の日がやってきました。
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AM9:30
各チームの選手達が会場に姿を見せます。各自トレーニングを積み練習を重ね、一人一人が目標を持ってこの日に備えてきました。
告知時に6チームでの開催となっていた今大会、直前で諸事情により千葉県2位通過の「バルサ」が出場を辞退。代替出場のチームとの交渉を重ねてきましたが至らず、結果5チームの総当たり戦となりました。
対戦チーム対策を打てるトーナメント形式ではなく、総当りのリーグ戦となったことで、全試合に手を抜けない過酷なレギュレーションに。見応えがある一方で、各チームには長丁場を耐えるための精神力と体力が求められることになります。
AM10:00
コートの解放のアナウンスとともに、待ちきれないとばかりに、各チームがウォーミングアップを始めます。今回出場する5チームは個性豊か。それぞれがチームの特徴を感じさせるようなウォーミングアップを行っていました。
©JSFA 和やかな雰囲気で余裕すら感じさせるダルク(東京都1位)
©JSFA BOSCO NEXT(東京都2位)はスタッフも加わっての練習。皆笑顔でチームの雰囲気はよいです
©JSFA 埼玉CAMPIONE(埼玉県)は第1試合からということもあってテンポの速いウォーミングアップ
©JSFA 対するEspacio(千葉県1位)は体を動かす前に車座になって入念なミーティング
©JSFA FC PORT(神奈川県)佐藤監督はピッチを指示しながら、チームの基本ルールを再確認する
AM10:30
各チームウォーミングアップに熱が入り、予定よりも若干遅れて開会式開始。選手たちは皆一様に緊張の面持ちで、日本ソーシャルフットボール協会副会長徳堂氏の開会挨拶に耳を傾けます。そしていよいよ、命運をかけた激闘の火蓋が切って落とされました!
©JSFA 開会宣言をする日本ソーシャルフットボール協会、徳堂氏
実力拮抗!予想通りの大混戦
試合は10分ハーフ前後半(延長戦なし)で、5チーム総当り。勝ち点制(勝利=3、引き分け=1、負け=0)で争われ、5チーム中の上位2チームが全国大会への切符を手にします。そのため、1チーム必ず1回は連続して試合に臨む場面があり、選手登録数の少ないチームにとっては非常に厳しいレギュレーションになります。
©JSFA ダルク(東京都1位)
©JSFA Espacio (千葉県2位)
©JSFA BOSCO NEXT (東京都2位)
©JSFA 埼玉CAMPIONE(埼玉県)
©JSFA FC PORT (神奈川県)
第1試合 埼玉CAMPIONE vs Espacio
セレクションで精鋭の力を結集した埼玉CAMPIONEと、日本代表数人を擁し、経験豊富なEspacioの興味深い組み合わせとなった初戦。
初戦の硬さから先に抜け出し、積極的に仕掛けたのは埼玉CAMPIONEでした。キャプテン11#吉澤選手を中心にゲームを組み立て、猛然と攻め込む埼玉CAMPIONE。パスも見事なまでに回り、幾度もEspacioの日本代表GKを脅かします。
©JSFA キャプテン11#を中心にゲームを組み立て、突出した組織力を見せる埼玉CAMPIONE
©JSFA 周囲の選手との連携も面白いように噛み合い、どこからでもEspacioゴールを襲う
©JSFA 急襲に次ぐ急襲で、反撃の糸口をつかめないEspacio陣営
©JSFA Espacio GKはロングフィードで状況を打開しようとします
全5チームの中で突出したパス回しと高い戦術力を武器に、優勝候補のお株を奪う動きを見せつける埼玉CAMPIONE。
攻撃だけでなく、圧巻は鉄壁の守備。果敢にスライディングタックルを仕掛けボールを奪取するシーンが何回も見られました。フットサルは対人のタックルが禁止されていますが、彼らはボールに向かうスライディングを巧みに使って、Espacioを再び自陣に釘付けにしていきます。
©JSFA 11#の攻守にわたる活躍に、Espacioの日本代表選手も本来の実力が出せません
後手に回ったEspacio。このまま押し込まれているわけにはいかず、反撃を試みるも得点に結びつきません。小さなミスが積み重なって、埼玉CAMPIONE相手に効果的な攻めができません。
©JSFA Espacioの反撃!しかしペナルティエリアに迫ることができず
そのまま埼玉CAMPIONEペースで試合は進み、タイムアップ。前後半ともに無得点に終わった第1試合でしたが、スコアレスドローの結果以上に、先の波乱を予感させるには十分な内容でした。
優勝候補にほとんど仕事をさせなかった埼玉CAMPIONEに、これから試合を控えてこの試合を見守っていた3チームは、一様に恐怖を感じたことでしょう。
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第1試合 RESULT
埼玉CAMPIONE 0-0 Espacio
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第2試合 FC PORTvs BOSCO NEXT
いよいよFC PORTの初戦が始まりました。相手は東京都2位、BOSCO NEXT。チームの雰囲気の良さ、結束力の高さは互いに引けを取らない両チームの一戦です。
開始直後から攻め込み続けるBOSCO NEXT。しかし高い集中力で臨むFC PORTは、素早いチェックと体を張ったディフェンスでピンチをしのいでいきます。
©JSFA 若い選手もベテランも率先して体を張る。疲れも厭わないのがPORTのスタイル
FC PORTの攻撃の中心にいるのは、去年の関東大会で得点王に輝いた0#橋口選手。
©JSFA
女性選手も含めた5人の仲間がゴールを守り通し、0#橋口選手にボールを託す。前線にかけ上がる0#橋口選手を、再び仲間がフォローする。その形を愚直に貫き通しました。
©JSFA 女性選手も相手選手のドリブルに立ちはだかり、チャンスを潰します。
©JSFA ボールを託された0#橋口選手は、体幹の強さを生かしてそのボールを確実に運んでいきます。
BOSCO NEXTもFC PORTの倍以上のシュートを浴びせ続けますがゴールを割れず。そのこぼれ玉をFC PORTが拾ってカウンターを仕掛けるパターンが続きます。
©JSFA パス回しや連携はさすがのクオリティ、BOSCO NEXT
おそらく技術力や戦術理解はBOSCO NEXTが上。しかし気持ちで勝ったのはFC PORTでした。
前半残り1分、FC PORTが奪ったボールは0#橋口選手の元へ。浅い角度から振り抜いたシュートはGKも止めきれず、ついに均衡が破れます。今大会通しての初得点はFC PORT 0#橋口選手によるものでした。
©JSFA 0#橋口選手の放った鋭いライナーはゴールネットに突き刺さります
©JSFA ピッチでもベンチでも、歓喜の輪が広がります!待望の先制点!
前半を1-0で折り返したFC PORTは、後半もハイプレスを仕掛けていきます。
後半3分。プレスによって誘ったパスミスを逃さず、速攻を仕掛けるFC PORT。相手GKが一旦は防ぐも、こぼれ球を再びボールをカットすると、今度は確実に決めて2点目。
©JSFA FC PORTキャプテンがハイプレスで奪う!
形勢は逆転し、FC PORTが疲れの見えたBOSCO NEXTを押し込む時間帯が増えてきます。そしてそのまま終了のホイッスルが鳴り響く!
初戦から高い集中力を見せたFC PORTが、総合力で勝ると思われていたBOSCO NEXTに対し、2-0という結果。スコアも内容も2戦目に弾みをつける最高の出だしとなりました。
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第2試合 RESULT
FC PORT 2-0 BOSCO NEXT
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第3試合 ダルクvsBOSCO NEXT
直前の試合で敗戦を喫したBOSCO NEXTは、インターバルもほとんどなく次の試合に挑みます。相手は昨年全国大会覇者、ダルク。敗戦のショックと疲れの残る最悪なタイミングで、最強クラスの相手と対峙することになりました。
©JSFA
対するダルク。東京予選ではBOSCO NEXTと対戦し勝利。戦績をみても、近年の主要大会ではほぼ負けがなく、チームの雰囲気としては上昇気流に乗っています。
©JSFA 連覇に向けて、初戦から気合の入るダルク
しかし試合は思わぬ形で始まりました。
開始1分、ダルクの選手のハンドで得たFKからBOSCO NEXTが早々に得点。開始直後で試合に入れていなかったダルクが、明らかに集中力を欠いたことによる失点でした。
©JSFA 思わぬ形で先制点をものにしたBOSCO NEXT、喜びが爆発します!
出鼻をくじかれたダルクは、10#を中心に立て直しを図りますが、思うようにパスがつながらず、またセットプレーでの連携ミスなども目に見えて増えていきます。
BOSCO NEXTサイドで攻め手を講じるも、積極的にシュートに行けず、ペナルティエリア直近でもパスを選択するなど、前回大会王者らしからぬプレーが目立ちました。
一方、早い時点で先制したBOSCO NEXTは試合を落ち着いて運び、危険なシュートもG守護神が好セーブ。
©JSFA BOSCO NEXTの陣深くまで切り込むもフィニッシュに持ち込めないダルク
しかし、黙っていなかったのは前回大会覇者。最初の失点から6分後、10#が相手のエリア不覚でプレスをかけてボールを奪取すると、そのままゴールに突進して右足一閃!前半終了間際に振り出しに戻すことに成功しました。
©JSFA 伸びたシュートは、BOSCO NEXT GKの頭上を越えてゴールネットへ!
後半に入るとダルクは本来の姿を取り戻し始めます。足元のテクニックと当たりの強さを生かした肉弾的な攻めで、BOSCO NEXT陣営にせまるシーンも増えてきました。
©JSFA
ところが、そんなダルクに再び試練が…。
後半5分、BOSCO NEXTが獲得したキックインをゴール前に直接センタリング。しっかりと処理すれば問題なかった場面で、ダルクの守備に綻びが現れます。GKが処理しきれなかったクリアボールを、マークが外れフリーで構えていたBOSCO NEXT10#が押し込み、2点目!!!!
©JSFA セットプレーでの失点が続いたダルク
ダルクは1点目と同じく、セットプレーのリスタートでDFの集中が切れた一瞬を突かれる、痛恨の失点でした。
©JSFA BOSCO NEXTは効率よく得点を重ねていきます
それでもダルクは反撃を続けます。さすがにBOSCO NEXTの攻勢も弱まり、逆にダルクが徐々に支配率を上げていきます。後半8分にはクロスバーを叩く惜しいシュートも。
©JSFA 時折放たれる、重くて強烈なシュート!
底力のあるダルクであれば、同点、そして逆転も不思議ではない雰囲気になってきました。そして、その執念がゴールに結びついたのは後半残り30秒のときでした。仲間の絶妙な落としを、待っていたのはエースナンバー10#!
©JSFA
目の覚めるボレーシュートはBOSCO NEXTのGKの横をすり抜けます。
土壇場での同点劇。ダルク、ここにあり!と思わせる圧巻のプレーでした。
残り15秒。このまま試合は終了…と思われたその直後、大きなドラマが待っていました。BOSCO NEXTのキックオフ直後、こぼれ球をダルクがGKにバックパス。球速が思ったよりも弱く、甘く転がったそのボールを、BOSCO NEXTは見逃しませんでした。そのまま振り抜かれた足先には、ネットに突き刺さるボールが。リスタートからゴールまで、わずか3秒足らずの出来事でした。
©JSFA 何が起こったのか、わからないほど一瞬の出来事でした
勝ち点が、ダルクの手からすり抜けていった瞬間でした。そして鳴り響くホイッスル。あまりにも無情な展開に、ダルクはしばし呆然。そしてBOSCO NEXTは優勝でもしたかのような歓喜にわき、そのコントラストは際立ったものとなりました。
©JSFA 呆然のダルク
全てのチームが1試合ずつ(BOSCO NEXTは2試合)を終えた時点でFC PORTが首位、2位BOSCONEXT、3位が同率でEspacioと埼玉CAMPIONE、最下位ダルクという、予想を裏切る、しかし一方で予想通りの大混戦となりました。
そして拮抗したレベル同士の対戦により、大会はさらに混迷を深めていくのです。
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第3試合 RESULT
BOSCO NEXT 3-2 ダルク
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②へ続く
※JSFA・日本ソーシャルフットボール協会より写真をご提供いただいております。
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